同じ釜の飯

もう40年の付き合いになる後輩がいる。大学時代からの付き合いで、当時はラグビー部で彼の尻を5年間押し続けその後、同じ病院で外科医として育った。30年の付き合いの先輩もいる。彼とは同じ病院で4年間手術をしまくった。また、私が30代の時に1年間研修医として面倒をみた医者がいる。ここのところ、不意に彼らに電話をして、手術を手伝ってもらう機会があった。3人とも私の突然の電話にいやがることもなくすぐに飛んできてくれて、手術を手伝ってくれた。
通常、外科手術は2、3人で行われるが、手術の間は張りつめたある緊張の時間を共有することになる。特に大動脈外科の長い手術は、小説に例えると動脈瘤切除を迎える準備段階は序章、最も緊張しまた、手術の醍醐味でもある瘤切除、人工血管置換は小説のクライマックスともいえる。人工血管に置換した後は、止血、閉創となり、手術も最終段階、終章となる。手術に参加したものは、このストーリーを共有し、同様に興奮し、その出来上がりに感激する。何十件、何百件もの手術を一緒にやっていると、手術中は何も会話がなくとも相手の人間性、持ち味が次第に分かるようになる。そのことが、長い年月が経っても昔通りの付き合いを可能にしているものと思う。
当院の大動脈外科を志す医師の中には、配偶者よりも長く時間を過ごす仲間がいるものがいる。きっとその仲間とは終生の付き合いとなるに違いない。

カテゴリー: S.S パーマリンク